2010年07月25日

EU銀行検査「審査甘い」の声

経済危機は世界に何をもたらしたか


 ギリシャ財政危機に端を発する金融不安をめぐり、欧州連合(EU)の銀行監督当局でつくる欧州銀行監督委員会(CEBS)が23日、域内91銀行の健全性を審査した「ストレステスト」の結果を公表した。「不合格」は7行で、35億ユーロ(約3950億円)の資本不足になる恐れがあると判定された。不合格が10〜20行、資本不足は数兆円規模という事前の予想を大きく下回ったことで、「審査が甘い」との批判が噴出しており、世界経済の足を引っ張る火種は、くすぶり続けたままだ。

 不合格となったのは、ドイツの不動産金融大手ハイポ・リアル・エステートとギリシャ農業銀行、スペインの貯蓄銀行5行。景気悪化が最悪のシナリオをたどった場合、91行全体で最大5659億ユーロ(約64兆円)の損失が発生するとの試算も示した。

 不合格となった銀行ではすでに、ハイポが公的資金の投入で国有化されているほか、ギリシャ農業銀行も同国大手のピレウス銀行が買収する方向。スペイン政府も貯蓄銀の再編を打ち出しており、「取り付けなどの金融危機や市場の混乱は起きない」(市場筋)との見方が大勢だ。

 テスト結果を受け、CEBSは「欧州の金融システムの健全性が確認された」との声明を出した。

 ただ、当局の思惑通り、欧州銀行への不信が払拭(ふつしよく)されるかは不透明だ。

 野村ホールディングスでは事前に、不合格が最大16行、資本不足は750億ユーロ(約8兆4600億円)と試算していた。市場の大方の予想を下回っただけでなく、「すでに対応策が決まっている銀行だけが不合格になった“出来レース”」(欧州銀アナリスト)との声も出ている。

 ストレステストは、財政危機でギリシャなどの国債が急落。国債を保有する銀行に多額の損失が発生し、破(は)綻(たん)するのではとの疑念が広がったことを受けたものだ。審査は国債や株価が大幅に値下がりし、欧州経済が想定よりも悪化するとの一定の条件を設定し、銀行の健全性がどこまで保たれるかを調べた。

 市場は、その条件設定を疑問視している。

 CEBSは、「想定シナリオが実際に起きる確率は5%という厳しい条件」と説明する。

 だが、市場関係者によると、「短期間に売買するトレーディング目的の国債しか対象になっていない」という。満期まで保有すれば、全額償還され、損失は発生しないためだ。しかし、ギリシャ国債などは「財政再建が頓挫し、債務カットや償還不能の債務不履行(デフォルト)の可能性も否定できない」(民間エコノミスト)といわれているが、そうした事態は想定していない。

 欧州では、国債だけでなく、不動産バブルの崩壊も問題になっているが、みずほ証券の高田創チーフストラテジストは「地価下落の影響が十分に反映されていない」と指摘する。

 テスト結果を受けた23日のニューヨーク株式市場は大幅上昇し、ひとまず好感した。ただ、欧州銀への不信が残ったままでは、再び市場が混乱する可能性がある。欧州に加え、米国でも景気回復が鈍化し、再び悪化する「二番底」のリスクが高まっている。

 特に欧州経済の悪化は、「欧州を最大の輸出相手先とし、世界経済を牽引(けんいん)する中国に波及する」(銀行系シンクタンク)と懸念されている。そうなれば、中国向け輸出に支えられた日本の景気も失速する。

 欧州と世界経済は依然として不信と不安の雲に覆われている。

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posted by 切葉鳩 at 09:43 | 北海道 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 世の中
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